Windows 12月MSMQ不具合の原因と緊急パッチKB5074976適用方法

概要

2025年12月18日、MicrosoftはWindows 10およびWindows Server向けに緊急の帯域外(Out-of-Band)更新プログラムをリリースしました。これは、同年12月9日に配信されたセキュリティ更新プログラム適用後に、多くの企業環境でMSMQ(Message Queuing)が正常に動作しなくなるという重大な不具合が発生したことへの対応措置です。

特にIIS(Internet Information Services)上で動作する業務アプリケーションや、バックグラウンドでの非同期処理を行っているシステムにおいて、サービス停止やエラーが多発しており、対応に追われている管理者も多い状況です。

主な影響

症状: MSMQキューが非アクティブ化、IISエラー(HTTP 500)、リソース不足エラー(0x80004005)

影響範囲: 企業サーバー環境、基幹システム、POSシステム

緊急対応

リリース日: 2025年12月18日(日本時間19日)

修正パッチ: KB5074976(Windows 10 22H2)ほか、対象OS別に複数

⚠️ 重要な注意事項

KB番号・対象OS・修正状況については、必ず最新情報をMicrosoft公式サポートページで確認してください。本記事の情報は2025年12月時点のものであり、状況は変化する可能性があります。


今回のMSMQ問題とは何か

まず、今回発生しているトラブルの概要について整理します。

MSMQとは

MSMQ(Message Queuing)とは、Windowsに標準搭載されているメッセージキューイング機能です。アプリケーション間でメッセージ(データ)を非同期かつ確実に送受信するための仕組みで、一時的にネットワークが切断されてもデータを保持できるため、企業の基幹システムやPOSシステムなどで広く利用されています。

何が起きたのか

2025年12月9日の更新プログラム適用後、このMSMQが突然正常に機能しなくなる現象が報告されました。具体的には以下のような症状です。

  • MSMQキューが「非アクティブ」状態になる
  • IIS上のサイトやアプリが「操作を実行するためのリソースが不足しています」というエラーで失敗する
  • 「ディスク容量またはメモリが不足しています」という誤ったログが出力される

企業環境で影響が大きい理由

Microsoftもアナウンスしている通り、この不具合は一般的な家庭用PC(Windows HomeやPro)で発生することは稀です。MSMQは主に企業内のサーバーや特定の業務端末で有効化される機能であるため、情シス部門やサーバー管理者が直撃を受ける形となりました。


不具合の原因と発生条件

12月9日配信のセキュリティ更新との関係

不具合のトリガーとなったのは、以下の2025年12月9日配信の累積更新プログラム(LCU)です。

  • Windows 10 22H2: KB5071546
  • Windows Server 2019: KB5071544
  • Windows Server 2016: KB5071543

原因:NTFS権限の変更

Microsoftの調査によると、原因はMSMQのセキュリティモデル変更に伴い、データ保存先である「C:\Windows\System32\MSMQ\storage」フォルダのNTFSアクセス許可(権限)が変更されたことにあります。

従来、このフォルダへ書き込みを行っていたサービスアカウント(NetworkServiceやIISのアプリケーションプールIDなど)が、更新後の厳格化された権限設定によって書き込みを拒否される状態となりました。その結果、メッセージファイル(*.mq)が作成できず、サービスが停止するという事態に陥っています。

誤解を招くエラーメッセージ

厄介なのは、根本原因が「アクセス権限」であるにもかかわらず、エラーメッセージが「System.Messaging.MessageQueueException: Insufficient resources to perform operation(エラーコード0x80004005)」として出力される点です。これにより、管理者が「サーバースペックの問題か?」と誤認し、トラブルシューティングが長期化するケースが見られました。

⚠️ エラーメッセージの誤認に注意

「リソース不足」「メモリ不足」と表示されても、実際の原因はNTFS権限の問題です。ディスク容量やメモリ増設では解決しません。イベントビューアーで「メッセージファイルを作成できません」というログがないか確認してください。


影響範囲と業務への具体的影響

この不具合を放置した場合、以下のような業務影響が出る可能性があります。

主な業務影響

  • 業務アプリの停止: MSMQを利用してデータ連携を行っている会計システムや受発注システムがデータを処理できず、業務がストップする恐れがあります
  • IISサイトのダウン: Webアプリケーションがバックグラウンド処理にMSMQを使用している場合、HTTP 500エラーなどでサイト自体が利用不能になる可能性があります
  • データ連携の遅延: 非同期処理が動かないため、データの反映が遅れたり、最悪の場合メッセージがロストするリスクも考えられます

12月18日リリースの緊急帯域外アップデート一覧

Microsoftは日本時間2025年12月19日(現地時間18日)、この問題を修正するための定例外(OOB:Out-of-Band)アップデートをリリースしました。対象OSとKB番号は以下の通りです。

対象OSKB番号
Windows 10 22H2(ESU対象)/ Windows 10 Enterprise LTSC 2021KB5074976
Windows Server 2019 / LTSC 2019KB5074975
Windows Server 2016 / LTSB 2016KB5074974
Windows Server 2012 R2 ※KB5074978
Windows Server 2012 ※KB5074980
Windows Server 2008 R2 ※KB5074977
Windows Server 2008 ※KB5074979

※Windows Server 2012 R2以前の環境へのパッチ適用にはESU(拡張セキュリティ更新)契約が必要です。

帯域外アップデートとは

通常の「第2火曜日(パッチチューズデー)」に配信される更新とは異なり、緊急性の高い問題を修正するために臨時でリリースされるものです。今回の更新プログラムは、Windows Updateで自動的には配信されない場合が多いため、管理者が手動で適用する必要があります。


今すぐ取るべき対応手順

該当する環境を運用している管理者は、以下の手順で対応を検討してください。

ステップ1: 自分の環境が対象か確認する
ステップ2: 修正パッチの入手と適用
ステップ3: 適用前の確認ポイント
ステップ4: 適用後の動作確認

ステップ1: 自分の環境が対象か確認する

まず、現在稼働しているサーバーやクライアントで以下の条件に当てはまるか確認します。

対象環境の確認項目

  • MSMQ機能が有効化されているか(「Windowsの機能の有効化または無効化」やサーバーマネージャーで確認)
  • 12月9日の更新プログラム(KB5071546など)が適用済みか
  • イベントビューアーで「メッセージファイルを作成できません」「リソース不足」等のエラーが出ているか

ステップ2: 修正パッチの入手と適用

対象環境であり、不具合が発生している(または発生リスクがある)場合は、Microsoft Updateカタログから修正パッチを入手します。

  1. Microsoft Updateカタログにアクセスし、上記リストのKB番号(例:KB5074976)で検索します
  2. OSのバージョン(x64、x86など)に合ったファイルをダウンロードします
  3. 管理者権限でインストールを実行し、サーバーを再起動します

⚠️ WSUS/Configuration Manager環境の注意

帯域外アップデートのため、適用判断は環境依存です。WSUSやConfiguration Managerを使用している場合は、手動でインポートする必要があります。

ステップ3: 適用前の確認ポイント

適用前の必須作業

  • バックアップ: システムバックアップ、またはスナップショットを必ず取得してください
  • SSUの確認: 最新のサービススタック更新プログラム(SSU)が適用されているか確認してください(通常は累積更新に含まれますが、念のため)

ステップ4: 適用後の動作確認

適用後は以下の点を確認してください。

適用後の確認項目

  • MSMQサービス(Message Queuing)が「実行中」になっているか
  • イベントビューアーの「アプリケーション」および「システム」ログに、MSMQ関連のエラーが出ていないか
  • 業務アプリケーションやIISサイトが正常に稼働し、メッセージの送受信が行えているか

更新を急ぐべきケース/慎重に進めるケース

緊急リリースとはいえ、全環境で即座に適用すべきとは限りません。状況に応じた判断が必要です。

更新を急ぐべきケース

既に障害が発生している環境: MSMQが停止し、業務に実害が出ている場合は、最優先で適用して復旧を図るべきです。

MSMQを多用する基幹システム: 現在は表面化していなくても、高負荷時にエラーが出る可能性があるため、メンテナンス時間を確保して適用することを推奨します。

慎重に進めるケース

MSMQを使用していない環境: MSMQが無効化されているサーバーであれば、今回の不具合の影響は受けません。2026年1月の月例更新には今回の修正が含まれる見込みですので、無理に手動適用する必要はありません(確定情報はMicrosoft公式サイトで確認してください)。

検証環境がない場合: いきなり本番環境へ適用せず、可能であればテスト環境や一部のサーバーで動作検証を行ってください。


まとめ:Windows 12月MSMQ不具合への対応

今回のMSMQ不具合は、セキュリティ強化に伴う権限変更が、既存のシステム構成と競合したことで発生した「副作用」と言えます。

管理者が取るべき対応は以下の通りです。

  • MSMQ利用有無の確認: 自社システムでMSMQが使われているか再確認する

    サーバーマネージャーまたは「Windowsの機能」で、MSMQ機能が有効化されているか確認してください。

  • 障害の有無の確認: リソース不足エラーやキューの停止が発生していないかログを確認する

    イベントビューアーで「メッセージファイルを作成できません」「0x80004005」等のエラーがないか確認してください。

  • パッチの適用: 不具合該当環境であれば、Microsoft Updateカタログから修正パッチ(KB5074976等)を入手し、計画的に適用する

    必ずバックアップを取得し、可能であれば検証環境で動作確認を行ってから本番環境へ適用してください。

「対象環境なら速やかに公式情報を確認し、計画的に適用する」というのが、今回の最適解となります。年末の繁忙期におけるトラブルかと思いますが、冷静な切り分けと対応を行いましょう。

⚠️ 最終確認

KB番号・対象OS・修正状況は必ず最新情報をMicrosoft公式サイトで確認してください。本記事の情報は2025年12月時点のものであり、状況は変化する可能性があります。

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