PCボトルネック完全診断ガイド|CPU/GPU負荷、熱、安定性の総合監視指標を解説
最終確認日:2026年1月18日
最近グラフィックボード(GPU)を換装したのに、ゲームのフレームレートが期待通りに伸びない…。ただし原因は、必ずしもハードウェア性能差(ボトルネック)とは限りません。まずは上限FPS・V-Sync・フレームリミッター(RTSS等)といった「設定起因」で頭打ちになっていないかを疑うのが近道です。低FPSの原因と対処は、設定調整を含めて幅広く整理されています。Intel:低フレームレートの一般的な原因と対処
ボトルネックとは、PCの構成要素(CPU、GPU、メモリ、ストレージなど)の中で、最も処理能力が低い部分が全体のパフォーマンスを制限してしまう現象を指します。CPU/GPU使用率の見方を含む概念整理は、メーカー解説も参考になります。Corsair:PCボトルネック(概念と使用率の例)
本記事では、CPUとGPUのボトルネック現象を特定し、解消するために必要な包括的な監視指標を、主に使用率のバランス、パフォーマンスの安定性、および熱/電力の健全性という観点から解説します。適切な指標を監視し、ツールの使い方を理解すれば、原因を「見える化」して次の打ち手に繋げられます。
💡 ボトルネックは「工場の流れ作業」の遅延
PCの性能は、製品の組み立てラインに例えられます。CPUは設計図(フレームデータの準備)を渡し、GPUは実際に製品を製造(描画)します。もしCPU(設計者)の作業が遅いのに、GPU(製造機械)だけが高速でも、全体の生産量(フレームレート)はCPUの遅さに引っ張られてしまいます。これがCPUボトルネックです。逆に、CPUが高速でもGPUの処理が追いつかない場合がGPUボトルネックです。全体の効率は、最も遅い工程に依存します。
最短で結論にたどり着く:ボトルネック診断フロー(YES/NO)
No → Q2へ
※ただし例外(重いレイトレーシング設定、ドライバ挙動、CPU側の要因が混ざる等)もあるため、迷う場合はQ3(特定コアの張り付き)も併せて確認すると安全です。
No → Q3へ
No → Q4へ
No → Q5へ
No → Q6へ
No → まずは測定条件(同一シーン/同一設定/同一ドライバ)を揃えて再計測
ボトルネックの特定に不可欠な「中核指標」は何?
ボトルネックを判断する基本は、アプリケーション実行中のCPUとGPUの使用率のバランスと、体感の差が出やすいフレームレートの安定性(フレームタイム/1% Low)をセットで見ることです。
CPUとGPUの利用率のパターンは?
以下の監視指標のパターンを理解することで、ボトルネックの種類を素早く特定できます。
| ボトルネックの種類 | 典型的な症状 | 監視指標のパターン |
|---|---|---|
| CPUボトルネック | フレームレートが伸びない/場面によりガクッと落ちる。 | CPU使用率が高い(例:90%前後)、GPU使用率が相対的に低い(例:70%未満)。 ※これらの数値はあくまで典型例で、解像度/画質設定、上限FPS、V-Sync、フレームリミッター(RTSS等)、電力制限、CPUの単一スレッド飽和などで変動します。 |
| GPUボトルネック | 高解像度・高設定で頭打ち/描画負荷が高いシーンで落ちる。 | GPU使用率が高い(例:90%前後)、CPU使用率が相対的に低い(例:70%未満)。 ※上限FPS/V-Sync/フレームリミッター/電力制限などがあるとGPU使用率は下がることがあります。 |
確認すべき具体的な使用率指標は以下の通りです。
- CPU使用率 (CPU Usage):CPU全体の負荷を示します。タスクマネージャーやMSI Afterburner、HWiNFOなどのツールで確認できます。
- GPU使用率 (GPU Usage):グラフィックス処理の負荷を示します。上限FPSや同期設定(V-Sync)などの制限がない前提では、高負荷時に高い使用率になりやすい一方、制限があると100%に張り付かないこともあります。
- コアごとのCPU使用率:特定のシングルコアが張り付いていないか(100%近い)を確認します。ゲームによってはマルチコア最適化が十分でないため、ここが上限になりやすいです。
パフォーマンスの安定性を示す指標は?
- フレームレート (FPS):1秒間に表示される画像の枚数。高いほど滑らかです。
- 1% Low FPS / 最小フレームレート:平均FPSだけでなく、ゲームプレイ中の「落ち込み」に強い指標で、低いと体感的なカクつきやラグにつながります。
- フレームタイム (Frame Time):フレームのレンダリングにかかった時間。スタッターはFPSよりもフレームタイムの乱れとして出やすいです。
平均FPS
ゲーム全体の滑らかさの指標。高ければ良いが、カクつき(スタッター)は検出できない。
1% Low FPS / フレームタイム
カクつきやラグの発生頻度を示す指標。安定していることが快適さに直結。
まずはここを揃える:OSD/ログで「見るべき項目リスト」
診断の精度は、同じシーン・同じ設定・同じドライバで計測できるかに左右されます。まずは以下の項目をOSD/ログに出して、同一条件で比較できるようにしましょう。
- GPU:GPU使用率、GPUクロック、GPU消費電力(Power Draw)、(可能なら)電力制限の兆候
- CPU:CPU全体使用率、コアごとの使用率(特に最大コア)、(可能なら)クロック
- 体感:FPS、フレームタイム、1% Low(取得できる範囲でOK)
- 温度:CPU温度、GPU温度
- メモリ:RAM使用量、VRAM使用量
OSD表示の手順はツールのUI変更もあり得るため、基本は公式手順に沿うのが安全です。MSI公式:MSI AfterburnerのOSD設定手順
誤判定TOP5(よくあるつまずき)
⚠️ 先回りチェック:よくある誤判定
- V-Sync/上限FPSでGPU使用率が低く見える:頭打ち条件があると、GPUは「余力がある」ように見えても不思議ではありません(まずQ1で除外)。
- CPU平均使用率が低いのに、実は1コア詰まり:平均だけを見ると見落としやすいので、最大コア(またはコアごと)を確認します。
- フレーム生成/アップスケーリングで指標の見え方が変わる:表示FPSや体感が変わるため、比較する時は同一条件(ON/OFFを固定)でログを取ります。
- 温度だけで判断してしまう:「温度が高い=スロットリング」とは限らないため、温度上昇と同時にクロック低下が起きているか(相関)で判断します。
- GPU使用率が高い=常にGPU上限、と決めつける:重い描画設定やドライバ挙動などで例外もあり得ます。迷ったらQ3(特定コア)やフレームタイムの乱れも併せて確認します。
典型パターン3つ:ログの読み方(数値断定なし)
パターンA:GPU上限
GPU使用率が高止まりし、フレームタイムも比較的安定している。→ まずはGPU負荷(解像度/画質/AA等)やアップスケーリング設定を見直す。
パターンB:CPUスレッド上限
特定コアの使用率が張り付き、GPU使用率が伸びにくい。→ 視野距離/描画距離、群衆/NPC、物理演算など「CPUに効きやすい設定カテゴリ」を優先して点検する。
パターンC:スロットリング/制限
温度上昇や電力制限の兆候と同時に、クロックが低下しフレームタイムが悪化する。→ 冷却/電力設定/ファンカーブ等を見直す。
ハードウェアの健全性および安定性に関わる指標は?
ボトルネックは性能差だけでなく、熱や電力、その他の要因によるサーマルスロットリングによって引き起こされることがあるため、物理指標もあわせて確認します。
温度とクロック周波数の監視がなぜ重要?
💡 サーマルスロットリングは「オーバーヒートによる減速」
温度が許容範囲を超えると、保護のために動作クロックを下げ、性能を抑えることがあります。高い使用率を維持していても、この現象が起きるとフレームレートは落ち、実質的なボトルネックになります。
- CPU温度 (CPU Temperature):CPUの許容温度(上限)は製品・世代で異なるため、原則としてCPU型番の仕様(Tjmax等)に従って判断してください。
- GPU温度 (GPU Temperature):GPUも温度ターゲット/上限や制御は製品・設定で異なります。単一数値で断定せず、ログ上で温度上昇とクロック低下の相関が出ているかで判断するのが安全です。
- CPU/GPUの動作クロック (Clock Speed):温度上昇や制限がかかると、クロックが目に見えて低下します。
- ファン回転数 (Fan Speed):長時間高回転が続く場合は、冷却の余裕が少ない可能性があります。
電力と電圧の指標は?
- 消費電力 (Power Draw):GPU/CPUが実際に消費している電力(W)。発熱や電源への負荷と関係します。
- 電力制限 (Power Limit):GPUの消費電力上限。性能の頭打ち要因になり得ます。
- 電圧 (Voltages):単体での善悪判断は難しいため、クラッシュや不安定と相関する兆候として補助的に扱います。
システム全体の補助指標とモニタリングツールは?
ボトルネックはCPU/GPU以外の要素、特にメモリやストレージによって引き起こされる場合もあります。
メモリとストレージの指標は?
- RAM使用量 (RAM Usage):不足するとスワップが発生し、体感が悪化しやすくなります。
- VRAM使用量 (VRAM Usage):高解像度・高画質ではVRAM容量が効きやすく、不足するとフレームレート低下やスタッターの一因になります。
- ストレージ速度 (Disk I/O):OS/アプリ起動や、ゲームのストリーミング(読み込み)由来のカクつきに関係しやすい指標です。
- ハードページフォールト (Hard pagefaults):継続的に多発し、かつスタッターと相関する場合は、メモリ不足や仮想メモリ依存の疑いが出ます。
システム遅延(レイテンシ)の診断は?
⚠️ DPCレイテンシの監視は「追加診断」
DPC/ISR実行時間は、特にリアルタイム音声などで問題になりやすい遅延要因で、バッファアンダーラン原因の解析として説明されています。Resplendence:LatencyMon(公式)
ゲーム用途では、まずCPU/GPU/温度/電力/メモリなど基本項目で切り分けたうえで、音飛びや原因不明の遅延が残る場合の追加診断として位置づけるのが安全です。
ボトルネック診断に推奨される監視ツールは?
多岐にわたる指標を同時に監視・記録するためには、以下のソフトウェアの併用が有効です。
主要な診断ツール:
- MSI Afterburner + RivaTuner Statistics Server (RTSS):
- ゲーム画面上にCPU/GPU使用率、温度、FPS、クロック速度などの主要な指標をリアルタイムで重ねて表示(OSD機能)できます。
- 長時間プレイ中のデータをファイルに記録(ロギング)する機能も備えています。
- HWiNFO:
- CPU、GPU、メモリなど、PC全体の詳細情報(温度、電圧、クロックなど)を監視し、ログとして保存できます。HWiNFO(公式)
- Afterburnerと連携することで、詳細項目をOSDに追加できる場合があります(環境によります)。
- LatencyMon:
- DPC/ISR実行時間やハードページフォールト等を測定し、リアルタイム処理の遅延原因を解析する際に使用します。
まとめ:PCボトルネック診断と解消のためのロードマップ
ボトルネック解消は、同一条件での計測と指標のセット読みから始まります。
- 最初に設定起因を除外:上限FPS/V-Sync/リミッターがあると、GPU使用率が低く見えることがあります。Intel:低FPSの原因と対処
- 中核指標:CPU/GPU使用率の偏り+フレームタイム/1% Lowで「上限がどこか」を推定します(数値は典型例として扱う)。
- 安定性指標(熱と電力):温度上昇とクロック低下が同時に起きていないか(相関)を見て、スロットリング/制限を疑います。
- 補助指標(メモリ・IO):RAM/VRAM、Disk I/O、ページフォールトを見て、スタッターと相関があるか確認します。
- 追加診断(必要時):音飛び/遅延が残る場合に、DPC/ISR等をLatencyMonで確認します。LatencyMon(公式)
単なるベンチマークスコアに頼るのではなく、フローに沿って「設定→使用率→安定性→熱/電力→メモリ/IO→必要なら遅延」を順に切り分けることで、原因に対して最短で打ち手を選べるようになります。




