企業のIMAP移行で起こる『共有既読問題』の解決ガイド|対応漏れ・二重対応を防ぐ運用体制
企業がIMAPでメールを運用する際、共有メールアドレス(info@、support@など)で発生する「共有既読問題」が業務リスクとして注目されています。本記事では、この問題の原因・影響を詳しく解説し、専用システムと組織的な運用ルールという2つの解決策を具体的に紹介します。
IMAPでは、1人がメールを開封すると全員のメールクライアントで「既読」になるため、対応漏れ・二重対応の業務リスクが発生します。この記事で紹介する対策は、企業管理者・IT部門・チームリーダーの方に特に推奨します。
この記事で分かる3つのポイント
- 共有既読問題とは何か: IMAPの仕組みと問題の原因
- 業務リスク: 対応漏れ・二重対応・顧客満足度低下の具体例
- 解決策: 専用システム(楽楽自動応対等)と組織的な運用ルール
1. 企業のIMAP移行で発生する「共有既読問題」とは?
1-1. 共有既読問題の定義
共有既読問題とは、複数人で同じメールアカウント(info@、support@など)をIMAPで運用する際、1人がメールを開封すると全員のメールクライアントで「既読」になってしまう現象です。これにより、以下のような業務リスクが発生します。
- 対応漏れ: 誰かが開封したメールを「誰かが対応済み」と誤認し、実際には未対応のまま放置される。
- 二重対応: 複数人が同じメールに対応し、顧客に重複した回答を送ってしまう。
- 顧客満足度の低下: 対応漏れ・遅延・重複回答により、顧客からの信頼を失う。
1-2. なぜIMAPで共有既読問題が発生するのか?
IMAPプロトコルの仕組みが原因です。IMAPは、メールサーバー上でメールを一元管理し、複数のデバイス・ユーザーで同じメールボックスを共有します。このため、1人がメールを開封すると、サーバー上の「既読フラグ」が立ち、他のユーザーのメールクライアントでも「既読」と表示されます。
これはIMAPだから発生するというより、『1つのメールボックスを複数人で共有する』『既読フラグをアカウント単位で共有する』運用全般に共通する問題です。
🔍 たとえ話で理解する
IMAPは「共有ノート」のようなものです。チームで1冊のノートを共有している場合、誰かが特定のページにチェックマーク(既読フラグ)をつけると、他のメンバーも「このページは確認済み」と認識します。しかし、チェックマークをつけた人が実際に対応したかどうかは分かりません。このため、誰も対応していないのに「既読」だけが記録される、という問題が起こります。
1-3. 共有既読問題が発生しやすい業務環境
- カスタマーサポート部門: support@などの共有アドレスで顧客問い合わせを受信。
- 営業チーム: info@で問い合わせを受け、複数の営業担当が対応。
- 総務・人事部門: 採用応募や社内問い合わせを共有メールで管理。
- 中小企業・スタートアップ: 専用のメール管理システムを導入せず、GmailやOutlookのIMAPで運用している場合。
GmailのWebインターフェースでも、複数人が同じGoogleアカウントにログインしてメールを閲覧する場合、同様の共有既読問題が発生します。IMAP特有の問題ではなく、「複数人で同じメールボックスを共有する運用」全般に共通するリスクです。
2. 共有既読問題を解決する2つの方法
共有既読問題を解決するには、①専用のメール共有システムを導入するか、②組織的な運用ルールを整備するか、またはその両方を組み合わせる必要があります。以下、それぞれの方法を詳しく解説します。
2-1. 方法①: 専用のメール共有システムを導入する
専用システムとは?
メール共有システムとは、複数人でのメール対応業務を効率化・可視化するためのSaaSツールです。以下のような機能を持ち、共有既読問題を根本的に解決します。
- ステータス管理: 各メールに「未対応」「対応中」「完了」などのステータスを設定し、誰が見ても対応状況が一目で分かる。
- 担当者アサイン: メールごとに担当者を割り当て、対応責任を明確化。
- 既読状態の個別管理: 各ユーザーの既読状態を個別に記録し、「誰が開封したか」「誰が未読か」を可視化。
- コメント・共有メモ: チーム内でメールに関するメモやコメントを共有し、対応方針を共有。
- 対応履歴の記録: 誰がいつ対応したかを自動記録し、監査・改善に活用。
代表的なメール共有システムの例
楽楽自動応対(旧:メールディーラー)(ラクス株式会社)
- 特徴: 問い合わせ管理とメール共有を一元化。ステータス管理、担当者アサイン、自動振り分け機能が充実。従来「メールディーラー」として提供されていたサービスが、現在は「楽楽自動応対」にリブランディングされています。
- 想定価格帯: サービスやユーザー数・機能によって大きく変わりますが、月額数千円〜数万円程度が一般的です。多くのサービスが「要見積もり」となっているため、導入時には公式サイトで最新の料金プランを確認してください。
- 適している企業: カスタマーサポート部門、中小企業、問い合わせ対応業務が多い企業。
Microsoft 365 Shared Mailbox(共有メールボックス)
- 特徴: Microsoft 365(旧Office 365)の標準機能。複数人で共有メールボックスにアクセスし、対応履歴を共有可能。
- 価格: Microsoft 365のサブスクリプションに含まれる機能であり、共有メールボックス自体には通常追加ライセンスは不要です(容量上限などの条件あり)。ただし、アクセスするユーザーには各サービスの有料ライセンスが必要です。詳細な条件は公式ドキュメントを確認してください。
- 適している企業: すでにMicrosoft 365を利用している企業、基本的な共有メール運用で十分な企業。
Google Workspace(Google Groups・Collaborative Inbox)
- 特徴: Google WorkspaceのGoogle Groups機能を利用し、共有メールアドレスを作成。基本的なステータス管理(未解決/解決済み)、担当者割り当て、返信履歴の共有が可能。
- 価格: Google Workspaceのサブスクリプションに含まれる機能であり、共有メールボックス自体には通常追加ライセンスは不要です(容量上限などの条件あり)。ただし、アクセスするユーザーには各サービスの有料ライセンスが必要です。詳細な条件は公式ドキュメントを確認してください。
- 適している企業: すでにGoogle Workspaceを利用している企業、基本的な共有メール運用で十分な企業。
- 注意点: 専用のメール共有システムと比べると機能は限定的。高度なステータス管理やワークフロー自動化が必要な場合は、専用システムの検討を推奨。
メール共有システムの機能・価格は、サービス提供者により随時変更される可能性があります。導入前に、公式サイトで最新の情報を確認することを強く推奨します。
専用システムのメリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 共有既読問題を根本的に解決 ✅ 対応状況が可視化され、業務効率が向上 ✅ 対応漏れ・二重対応のリスクを大幅に削減 ✅ 対応履歴が自動記録され、監査・改善に活用可能 | ❌ 導入コストがかかる(月額数千円〜数万円) ❌ 従業員の学習コスト・運用体制の整備が必要 ❌ 既存のメールシステムとの統合が必要な場合がある |
2-2. 方法②: 組織的な運用ルールを整備する
専用システムを導入しない場合でも、組織的な運用ルールを整備することで、共有既読問題のリスクを軽減できます。以下、具体的なルールの例を紹介します。
①対応権限の明確化
- ルール: 特定の曜日・時間帯ごとに担当者を割り当て、その担当者のみがメールを開封・対応する。
- 例: 「月曜・水曜・金曜はAさん、火曜・木曜はBさんが対応」というルールを設定。
- 効果: 対応責任が明確になり、対応漏れ・二重対応のリスクが減少。
②フォルダー管理とラベル付け
- ルール: メールを「未対応」「対応中」「完了」などのフォルダーに分類し、対応状況を可視化。
- 例: メールクライアントで「未対応」フォルダーを作成し、対応が必要なメールをすぐに確認できるようにする。
- 効果: 対応状況が一目で分かり、対応漏れを防ぎやすくなる。
③チーム内コミュニケーションの強化
- ルール: Slack、Microsoft Teams、Chatworkなどのチャットツールで、メール対応状況を随時共有。
- 例: 「このメールはAさんが対応中です」とチャットで共有し、他のメンバーが重複対応しないようにする。
- 効果: リアルタイムで対応状況を共有でき、二重対応のリスクが減少。
④サーバー容量とアクセス権限の管理
- ルール: メールサーバーの容量を定期的に確認し、不要なメールを削除またはアーカイブ。アクセス権限を適切に設定し、必要なメンバーのみが共有メールボックスにアクセスできるようにする。
- 例: 「1年以上前のメールは自動的にアーカイブフォルダーに移動」というルールを設定。
- 効果: サーバー容量不足によるメール受信障害を防ぎ、業務継続性を確保。
組織的な運用ルールのメリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 追加コストがかからない ✅ 既存のメールシステムをそのまま利用可能 ✅ 組織の実情に合わせて柔軟にルールを設定できる | ❌ 共有既読問題を根本的には解決できない ❌ 従業員の運用遵守に依存し、ヒューマンエラーのリスクが残る ❌ 対応状況の可視化が限定的で、管理者の負担が大きい |
3. 共有既読問題を解決するための推奨アプローチ
共有既読問題を解決するには、企業の規模・業務特性・予算に応じて、最適な方法を選択する必要があります。以下、推奨アプローチを紹介します。
📊 あなたの企業に最適な解決策は?
- 共有メール対応が業務の中心(カスタマーサポート、営業チーム等)
→ 専用のメール共有システムを導入(楽楽自動応対等) - すでにMicrosoft 365またはGoogle Workspaceを利用中
→ Shared MailboxまたはGoogle Groupsを活用(サブスクリプション範囲内で基本的な共有メール運用が可能) - 予算が限られている、または共有メール対応が少量
→ 組織的な運用ルールを整備(対応権限の明確化、フォルダー管理、チーム内コミュニケーション強化) - 上記の組み合わせ
→ 運用ルール+専用システム(運用ルールで基本的な対応を整備し、専用システムで高度な管理を実現)
✅ 共有既読問題を解決するためのチェックリスト
- □ 自社の共有メール運用で、対応漏れ・二重対応が発生していないか確認する
- □ 共有メール対応の業務量・頻度を把握し、専用システムが必要か判断する
- □ すでにMicrosoft 365またはGoogle Workspaceを利用している場合、Shared MailboxまたはGoogle Groupsの活用を検討する
- □ 専用システムを導入する場合、複数のサービスを比較検討し、自社に最適なものを選ぶ
- □ 組織的な運用ルールを整備し、従業員に周知・徹底する
- □ 運用開始後、定期的に対応状況を確認し、改善点を洗い出す
4. よくある質問(Q&A)
Q1. IMAPではなくPOPを使えば、共有既読問題は発生しないのでは?
A: POPはメールをローカルにダウンロードして管理するプロトコルのため、複数人で同じメールボックスを共有する運用には適していません。また、POPでは「既読・未読やフォルダー構成などの状態」を複数デバイス間で同期できないため、業務効率が低下しやすくなります。IMAPの共有既読問題を解決するには、専用システムの導入または運用ルールの整備が推奨されます。
Q2. Gmailの共有メールでも共有既読問題は発生しますか?
A: はい。複数人が同じGoogleアカウントにログインしてGmailのWebインターフェースでメールを閲覧する場合、同様の共有既読問題が発生します。Google Workspaceを利用し、Google Groups(Collaborative Inbox)機能を活用することで、基本的なステータス管理と担当者割り当てが可能になります。ただし、より高度な管理が必要な場合は、専用のメール共有システムの導入を検討してください。
Q3. 専用システムを導入する場合、既存のメールアドレスをそのまま使えますか?
A: 多くのメール共有システムは、既存のメールアドレスをそのまま利用可能です。メールサーバーの設定を変更し、専用システムにメールを転送する形で運用します。具体的な設定方法は、各サービスの公式サイトやサポート窓口にお問い合わせください。
Q4. 組織的な運用ルールだけで対応漏れを完全に防げますか?
A: 組織的な運用ルールは、対応漏れ・二重対応のリスクを軽減することはできますが、完全に防ぐことは困難です。従業員のヒューマンエラーや、ルールの運用徹底の難しさがあるためです。対応漏れを根本的に防ぐには、専用のメール共有システムの導入が最も効果的です。
Q5. メール共有システムの導入コストはどのくらいですか?
A: サービスや機能・ユーザー数により異なりますが、月額数千円〜数万円程度が一般的です。無料トライアルを提供しているサービスも多いため、導入前に実際に試してみることをおすすめします。詳細な価格は、各サービスの公式サイトでご確認ください。
🏢 企業のIMAP移行を成功させる
➡️ POP廃止対策の全体像を確認する
IMAP以外の選択肢も含めた総合ガイド
➡️ なぜGoogleはPOP廃止を決断したのか?
背景を理解して、今後の戦略を立てる
まとめ: 共有既読問題を解決し、安心・効率的なメール運用を実現しましょう
企業がIMAPでメールを運用する際、共有既読問題は避けて通れない課題です。この問題を放置すると、対応漏れ・二重対応・顧客満足度の低下といった深刻な業務リスクが発生します。
本記事で紹介した2つの解決策を参考に、あなたの企業に最適な方法を選択してください。
- ①専用のメール共有システムを導入する: 楽楽自動応対(旧:メールディーラー)、Microsoft 365 Shared Mailbox、Google Workspace Groupsなど。対応状況の可視化、ステータス管理、担当者アサイン機能により、共有既読問題を根本的に解決。
- ②組織的な運用ルールを整備する: 対応権限の明確化、フォルダー管理、チーム内コミュニケーション強化。追加コストなしで、リスクを軽減。
なお、Gmailでは「他のアカウントのメールをPOPで取得する機能(外部メール受信)」が2026年1月に廃止予定と案内されており、今後はIMAPや専用システムを利用したメール統合が増える可能性があります。ただし、POPやIMAPそのものが廃止されるわけではなく、各サービスの提供状況は今後も変更される可能性があるため、最新情報を確認してください。
早めに対策を講じ、安心・効率的なメール運用体制を構築しましょう。
✅ 最終チェックリスト
- □ 自社の共有メール運用で共有既読問題が発生していないか確認しましたか?
- □ 専用システムの導入、または運用ルールの整備を検討しましたか?
- □ すでにMicrosoft 365/Google Workspaceを利用している場合、Shared Mailbox/Google Groupsを活用できるか確認しましたか?
- □ 従業員に運用ルールを周知し、対応漏れ・二重対応のリスクを共有しましたか?
- □ 運用開始後、定期的に対応状況を確認し、改善を続ける体制を整えましたか?
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