「もし自分に万が一のことがあったとき、スマホやパソコンの中はどうなるのだろう」そう思いながらも、なかなか手が付けられずにいる方は少なくありません。
実は、デジタル終活は特別なことではありません。アカウントの一覧を作り、パスワードを安全に残し、大切な写真をバックアップしておく、この3つの基本ステップから始められる、日常のデータ整理の延長線上にある取り組みです。
国民生活センターは2024年11月、「今から考えておきたい『デジタル終活』」と題した啓発資料を公表し、デジタル遺品によるトラブルへの備えを広く呼びかけています。「終活」という言葉に抵抗を感じる方も、「デジタルデータの整理」として気軽に取り組んでいただければ幸いです。
この記事では、① アカウントの棚卸し → ② パスワードの整理 → ③ データのバックアップという流れに沿って、具体的な手順をご案内します。
デジタル終活とは?なぜ今必要なのか
デジタル終活の意味とデジタル遺品の範囲
デジタル終活とは、パソコンやスマートフォンに保存されたデータや、オンラインサービスのアカウント情報を生前に整理し、万が一の際に家族がスムーズに対応できるよう準備しておくことです。
整理の対象となる「デジタル遺品」は、大きく2種類に分けられます。
| 種類 | 主な内容 |
|---|---|
| オフラインのデジタル遺品 | パソコン・スマホ内の写真・動画・文書、外付けHDD、USBメモリに保存されたデータ |
| オンラインのデジタル遺品 | メール・SNSのアカウント、ネットバンキング・ネット証券、サブスクリプション(動画・音楽・雑誌等)、クラウドストレージに保存されたデータ |
特にオンラインのデジタル遺品は、IDとパスワードが分からないと家族がアクセスできないため、事前の準備がより重要になります。
💡 デジタル遺品は「見えない鍵のかかった引き出し」
アナログの遺品(通帳・印鑑・権利書など)は物理的に見つかれば手続きができます。しかしデジタル遺品は、正しいパスワードという「鍵」がなければ、家族が目の前にデバイスがあっても開けることができません。鍵の在り処を伝えておくことが、デジタル終活の核心です。
放置するとどうなるか – 家族が困る具体的な場面
国民生活センターの啓発資料では、デジタル遺品をめぐる次のようなトラブル事例が紹介されています。
⚠️ デジタル終活をしないと起こりうるトラブル
- 故人が利用していたネット銀行の手続きをしたくても、スマホが開けず契約先が分からない
- コード決済サービスの相続手続きが1ヶ月以上経っても終わらない
- 故人が契約したサブスクの請求を止めたいが、IDとパスワードが分からない
- 放置されたSNSアカウントが第三者に乗っ取られ、なりすまし被害が発生した
- クラウドサービスの契約が切れ、保存していた家族の写真・動画が消えてしまった
また、同資料(国民生活センター、2024年11月)が引用する総務省「令和5年通信利用動向調査」によると、スマートフォンでインターネットを利用する人の割合は60代で78.3%、70代で49.4%に達しています。シニア層のデジタル利用が急速に広まった今、デジタル終活はあらゆる世代にとって身近な課題となっています。
デジタル終活は「特別なこと」ではない
「難しそう」「全部一度にやらなければならない」と感じて、手が止まってしまう方も多いかと思います。しかし、デジタル終活は決して特別な作業ではありません。
スマホのロック解除パスワードを紙に書いておくだけでも、立派なデジタル終活の第一歩です。普段のデータ整理の延長として、少しずつ進めていただければ十分です。また、パソコンやスマホのデータを整理する過程で、ご自身にとっても「今使っていないサービスを解約する」「大切な写真をまとめる」など、日常的なメリットも得られます。
なお、パソコンに保存された不要なデータの整理・処分方法については、パソコンのデータ処分と初期化の方法もあわせてご参照ください。
まず何から始める?デジタル終活の進め方と3つのステップ
デジタル終活で整理が必要なものの全体像
デジタル終活で整理が必要なものは、大きく3つのカテゴリに分けられます。
| カテゴリ | 具体的な対象 |
|---|---|
| ① 端末 | パソコン、スマホ、タブレットのロック解除パスワード・PINコード |
| ② アカウント類 | メール、SNS(X・Instagram・Facebook等)、ネットバンキング・証券・保険、サブスクリプション、クラウドストレージ |
| ③ データ | 写真・動画、重要な文書・書類、アドレス帳・連絡先 |
優先順位は「スマホのロック解除情報」から
国民生活センターが最も優先すべきと呼びかけているのが、スマホのロック解除パスワード(PINコード・パスコード)を家族が分かる形で残しておくことです。
スマホは今や、ネットバンキング・電子決済・SNS・メールなど、あらゆるオンラインサービスへの入口(鍵)になっています。スマホさえ開けることができれば、家族は登録サービスを確認したり、各種手続きを進めたりすることが格段にスムーズになります。
一気にやらなくていい – 段階的な始め方
すべてを一度に整理しようとすると途中で挫折しがちです。以下のように週末などを活用して段階的に取り組むことをおすすめします。
このペースで進めれば、無理なく着実にデジタル終活を完了させることができます。
ステップ1:アカウント・サービスを棚卸ししてリストを作る
洗い出すべきアカウントの種類と確認方法
まず、現在利用しているすべてのオンラインサービスを洗い出します。以下のカテゴリを参考に、使っているものを書き出してみましょう。
洗い出すべきアカウントの主なカテゴリ
- メール(Gmail、Yahoo!メール、プロバイダのメール等)
- SNS・コミュニケーション(X、Instagram、Facebook、LINE等)
- 金融・決済(ネットバンキング、ネット証券、PayPay・楽天Payなどの電子決済、ネット生命保険)
- サブスクリプション(Amazonプライム、Netflix、Spotify、楽天マガジン等)
- クラウドストレージ(Googleフォト、iCloud、Dropbox等)
- ショッピング(Amazon、楽天市場等の購入履歴・登録情報)
洗い出すヒントとして、スマホにインストールされているアプリの一覧を確認する方法と、メールの受信箱で「登録完了」「アカウント作成」などのメールを検索する方法が有効です。
アカウント一覧表の作り方
洗い出したサービスを、以下のような表にまとめていきます。記録媒体は紙のノートでも、パソコンのExcelなどの表計算ファイルでも構いません(それぞれの保管方法については次のステップで解説します)。
| サービス名 | URL / アプリ名 | 登録メールアドレス | ID・パスワードの保管場所 | 備考(解約時の注意等) |
|---|---|---|---|---|
| 例:〇〇銀行(ネット) | 例:〇〇.co.jp | 例:△△@gmail.com | 例:金庫内のノート | 例:相続手続きは窓口へ |
すべてを一度に埋めようとしなくても大丈夫です。まずはサービス名と登録メールアドレスだけでも記録しておくと、後の整理が格段に楽になります。
「残すもの」「処分するもの」「隠すもの」に分ける
アカウントを洗い出したら、以下の3つに分類します。
✅ 残すもの
家族に引き継いでほしいもの。ネットバンキング・証券などの金融資産、家族への連絡先、大切な写真・動画などが該当します。
🗑️ 処分するもの
使っていないサービスや、死後に残す必要のないアカウント。生前に削除・退会しておくことで、家族の手続き負担を大幅に減らせます。
🔒 隠すもの(本人のプライバシー)
家族に見られたくない日記・個人的なメモ等。「死後に削除してほしい」という意向をエンディングノートに記載しておきましょう。
不要なアカウントは生前に削除・退会しておくと、個人情報の漏洩リスクを下げ、家族の負担も軽減できます。
ステップ2:パスワードを安全に整理して家族に残す方法
パスワードを紙に書くのはアリ?セキュリティ上の考え方
「パスワードを紙に書いていいの?」と不安に感じる方も多いかと思います。セキュリティの観点から言えば、紙への記録は通帳や印鑑と同じ扱いで管理すれば十分に安全とされています。
大切なポイントは2つです。
- 端末本体と同じ場所に置かない:スマホと一緒に盗まれると二段階認証まで突破されるリスクがある
- 人目につかない場所に保管する:金庫や鍵のかかる引き出しが理想的。少なくとも他人の目に触れない場所へ
パスワードの日常的な管理方法(パスワードマネージャーの活用など)については、パスワード管理の方法と安全な保管のポイントで詳しく解説しています。
パスワードを直接書かずに伝えるヒント方式
パスワードをそのまま書くことに抵抗がある場合は、家族だけが分かるヒント形式で記録する方法もあります。
例えば「母の誕生日(西暦)の下4桁+〇〇」「自宅の旧電話番号」のような形です。ただし、ヒントが分かりにくすぎると家族も解けないため、信頼できる家族に口頭で補足を伝えておくとより確実です。
⚠️ 利用規約への配慮
一部のサービスでは、利用規約上「IDやパスワードを第三者に共有すること」を禁止している場合があります。ただし、死後の家族への情報伝達は「やむを得ない場合」として実務上は大きな問題にならないとされるケースが多いものの、サービスによって異なります。不安な場合は各サービスの利用規約をご確認ください。なお、この記事は法的なアドバイスを提供するものではありません。
Apple・Googleが用意する「故人アカウント管理機能」の設定
パスワードを伝えるよりも確実な方法として、Apple・Googleがそれぞれ公式の機能を提供しています。
Apple「Legacy Contact(故人のアカウント管理連絡先)」:信頼できる家族を事前に指定しておくと、本人が亡くなった後にその人物がApple IDのデータにアクセス申請できる機能です。詳しい設定方法はApple公式サポートページ(故人のアカウント管理連絡先を追加する方法)でご確認ください。
Google「Inactive Account Manager(アカウント無効化管理ツール)」:Googleアカウントが一定期間使われなかった場合に、指定した相手に通知したり、データをダウンロードできるよう設定できる機能です。詳細はGoogle アカウント管理ページからアクセスできます。
これらの機能を活用すると、パスワードを直接共有せずとも、本人の意思に基づいた形でデータの引き継ぎが実現できます。
ステップ3:写真・大切なデータをバックアップして家族と共有する
スマホ・PCの写真をクラウドにバックアップする方法
スマホや古いパソコンに保存された写真・動画は、端末が壊れたり紛失したりすると二度と取り出せない場合があります。クラウドへのバックアップを設定しておくと、端末の状態に関わらずデータが守られます。
主なクラウドサービスの特徴:
- Googleフォト:Androidスマホとの相性が良く、自動バックアップ設定が可能。家族との共有アルバムも作成できる(Google フォト公式ヘルプ)
- iCloud写真:iPhoneをお使いの方に最適。iCloud設定から自動バックアップを有効にすると、Wi-Fi接続時に自動で同期される(Apple iCloudサポート)
iPhoneのバックアップ手順については、iPhoneのバックアップ方法と確認手順で詳しく解説しています。また、クラウドへの同期設定全般については、クラウド同期の設定ガイドもご参照ください。
外付けHDDやUSBへの保存と保管のポイント
クラウドへの保存に不安がある方や、インターネット環境に依存したくない方には、外付けハードディスク(HDD)やUSBメモリへの物理バックアップが有効です。
物理バックアップを行う際のポイントをご紹介します。
物理バックアップを「家族が使える状態」にするためのポイント
- 外付けHDDやUSBに「写真バックアップ 2024年まで」のようなラベルを貼る
- 家族が見つけやすい場所(押し入れの決まった場所など)に保管する
- エンディングノートや保管場所のメモに、HDDの場所と内容を記録しておく
- 定期的(年1回など)にバックアップを更新する習慣をつける
- HDDは衝撃・水濡れに弱いため、ケースに入れて保管する
PCのデータを丸ごと移行・保存する方法については、パソコンのデータ移行完全ガイドで詳しく解説しています。
家族と共有フォルダ・アルバムを作っておく
「家族と共有フォルダを作っておく」という方法も、デジタル終活として非常に効果的です。Googleフォトの「共有アルバム」機能やiCloudの「共有アルバム」を活用すると、本人が存命中から家族が写真を閲覧できる状態を作れます。
また、GoogleフォトにはGoogleアカウントの「無効化管理ツール」と連携することで、本人が亡くなった後も指定した家族がアクセスできる設定が可能です。生前から共有しておくことで、葬儀の遺影選びや思い出の整理にも役立てていただけます。
データ整理・バックアップの作業量が多い場合や、操作に不安がある場合は、PCホスピタルなどの専門サポートサービスへの依頼も選択肢のひとつです。データのバックアップや整理作業についてもサポートに対応しています(詳細はまとめセクションをご参照ください)。
亡くなった後のSNS・サブスクはどうなる?解約・削除の手順
SNSアカウントの死後の処理方法
SNSアカウントを放置すると、乗っ取り被害やなりすまし投稿のリスクがあります。主なSNSの死後の対応方法をご紹介します。
X(旧Twitter)の場合:権限のある遺産管理人または相続人がXに削除を依頼します。Xの管理者から必要書類の案内メールが届いた後、故人の情報・依頼者の身分証明書・死亡診断書のコピーを送付します。詳細はX(旧Twitter)のポリシーページでご確認ください。
Facebook・Instagramの場合:Facebookでは「追悼アカウント」として故人のページを保存する選択肢もあります。削除を希望する場合は、遺族が専用フォームから申請します。詳細はFacebook ヘルプセンター(故人アカウント)を参照してください。
いずれのSNSも、手続きには故人の死亡を証明する書類(死亡診断書のコピー等)と、依頼者が相続人であることを証明する書類が必要になるケースが一般的です。生前に家族へ「どのSNSを使っているか」を伝えておくと、手続きがスムーズになります。
サブスクリプションの解約と未払い防止
動画・音楽・雑誌・ソフトウェアなど、現在はさまざまなサブスクリプションサービスが存在します。本人が亡くなった後も、解約手続きが取られない限り、登録されたクレジットカードへの請求が続いてしまいます。
ステップ1で作成したアカウント一覧に、「サービス名・月額料金・引き落とし日・解約方法(各社公式サイトへのURL)」を記載しておくと、家族が漏れなく解約手続きを進められます。各サービスの解約手順や料金の詳細については、各社の公式サイトでご確認ください。
ネットバンク・電子決済の扱い(相続に関わる注意点)
ネットバンキングやPayPayなどの電子決済サービスは、通帳が発行されないため、家族が存在自体を把握していないケースがあります。これらに残高や資産が存在する場合、相続財産として扱われる可能性があります。
⚠️ 相続・法律に関する重要な注意点
ネットバンキングや電子決済の相続手続き、および仮想通貨の取り扱いなどは、法律・税務に関わる複雑な問題を含む場合があります。この記事では「情報を残しておくことの重要性」を中心に解説しており、具体的な相続手続きの方法については、弁護士・税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。
デジタル終活の観点では、「どの金融機関に、どのようなネット口座があるか」をアカウント一覧に記録しておくことが最も重要です。これにより家族が相続の全体像を把握できるようになります。
よくある質問(FAQ)
デジタル終活はいつから始めるのが良いですか?
年齢や健康状態に関わらず、できるだけ早い段階で始めることをおすすめします。スマホのロック解除パスワードを書いた紙を用意するだけでも、立派な第一歩です。一度整えた後は、新しいサービスへの加入や端末の変更のたびに情報を更新する習慣をつけると安心です。
パスワードを紙に書くのはセキュリティ上大丈夫ですか?
通帳や印鑑と同じ感覚で、人目につかない場所に保管すれば十分安全とされています。ただし、スマホやパソコン本体と同じ場所には置かないことが重要です。端末と一緒に盗難にあった場合、ロック解除まで突破されるリスクがあるためです。金庫や鍵のかかる引き出しでの保管が理想的です。
整理するアカウントが多すぎて、何から手をつければいいか分かりません
まずは「スマホのロック解除パスワード」と「契約中のサブスクリプションの一覧」だけを記録することから始めましょう。この2つを整えるだけで、家族が最も困るトラブルの多くを予防できます。全部を一度にやる必要はありません。週末に少しずつ進めていくことをおすすめします。
亡くなった後のSNSアカウントは、家族が削除できますか?
多くのSNSでは、遺族(相続人や遺産管理人)からの申請でアカウントの削除や追悼アカウントへの変更が可能です。手続きには死亡診断書のコピーや依頼者の身分証明書が必要になるケースが一般的です。なお、各SNSによって手続き方法が異なりますので、詳細は各サービスのヘルプページをご確認ください。
デジタル終活の整理が大変そうで、自分でできるか不安です
操作に不慣れな場合や、データ量が多くて整理の見通しが立ちにくい場合は、パソコン・スマホのサポートサービスを活用する方法もあります。PCホスピタルでは、データの整理・バックアップに関するサポートにも対応しています。一人で抱え込まず、必要に応じてサポートを活用しながら進めることも選択肢のひとつです。
まとめ:デジタル終活は「今日」から始められる
この記事では、デジタル終活の基本ステップと各手順のポイントを解説しました。
- デジタル終活とは何か:パソコン・スマホのデータやオンラインアカウントを生前に整理し、家族への引き継ぎを準備すること。放置すると相続や解約手続きで家族に大きな負担がかかります。
- まず「スマホのロック解除パスワード」から:すべてのオンラインサービスへの入口になるスマホのパスワードを、安全な形で残しておくことが最優先事項です。
- アカウント一覧を作る:使っているサービスを「残すもの・処分するもの・隠すもの」に分類し、ID・保管場所の情報をまとめておきましょう。
- パスワードは紙でも管理できる:通帳と同じ扱いで安全な場所に保管すれば十分。Apple・GoogleのアカウントはLegacy Contact・無効化管理ツールの活用も検討を。
- 写真・データはクラウドまたは物理媒体にバックアップ:家族が見つけられる形で残しておくことが大切です。
- 死後のSNS・サブスクは事前に情報を残す:アカウント一覧に「どのサービスをどう処理してほしいか」の意向も記載しておくと家族の手続きがスムーズになります。
デジタル終活は一度に完璧に仕上げる必要はありません。まず今日、スマホのパスワードを1枚の紙に書いておくことから始めてみてください。
操作が不慣れな場合や、データ量が多くて一人では難しいと感じる場合は、専門のサポートサービスを頼ることも賢明な選択です。パソコン・スマホの設定や操作に関するお困りごとは、PCホスピタルなどの専門業者への相談も選択肢のひとつとしてご検討ください。

パソコン・iPhone・スマホの初期設定から専門性の高い難しい設定まで「安心」「安全」にPCホスピタルにお任せできます!