1. AIサービスはどのようにデータを利用しているのか？

■ データ利用の目的

ChatGPT、Copilot、Geminiをはじめとする多くのAIサービスでは、ユーザーが入力した会話内容や利用パターンを次のような目的で利用することがあります。

• モデルの性能向上(学習): AIの回答精度を高めるため、一部のユーザーデータを学習データセットに追加する。
• 品質管理: 不適切な回答や誤動作を検知・改善するため、会話ログを人間が確認する。
• サービス改善: 利用統計や傾向を分析し、新機能の開発や既存機能の改善に役立てる。

■ 無料版・有料版・法人版での違い

OpenAI、Microsoft、Googleいずれも、プラン(無料/有料/法人)によってデータ利用のポリシーや保護レベルが異なります。

ポイント: 「無料版=必ず学習される」「有料版=完全に守られる」というわけではなく、設定やプランごとの確認が重要です。

2. データ学習で考えられるリスク

■ 個人情報・機密情報の漏洩リスク

もしAIの学習データに個人情報(氏名、住所、電話番号)や機密情報(契約書の内容、顧客リスト、社内資料など)が含まれた場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。

• 他のユーザーへの露出: AIが学習したデータの一部を、別のユーザーへの回答に引用してしまう可能性(確率は低いが理論上ゼロではない)。
• プライバシー侵害: 本人が意図しない形で個人情報が第三者に提供されるリスク。
• コンプライアンス違反: GDPR、個人情報保護法、業界規制(金融、医療など)に抵触する可能性。

■ 法人利用での注意点

企業や組織でAIサービスを利用する場合、法人向けプラン(ChatGPT Team/Enterprise、Microsoft 365 Copilot、Google Workspace Gemini)を契約すれば、顧客データは学習に利用されないという保証が得られます。

個人向けプランで業務利用している場合は、今すぐ法人向けプランへの移行またはオプトアウト設定の徹底を検討しましょう。

3. ChatGPTのオプトアウト設定(Data Controls)

■ 設定手順(無料版・Plus共通)

OpenAIでは、「Data Controls」という設定で、会話データをモデル学習に利用するかどうかをユーザー自身で制御できます。以下の手順で設定を確認・変更しましょう。

■ ChatGPT Team / Enterprise / Businessのデータ保護

法人向けプラン(ChatGPT Team、Enterprise)では、顧客が入力したデータはOpenAIのモデル学習に利用されないことが契約上保証されています。OpenAIの法人向けプライバシーポリシーでは、顧客データの機密保持とモデル学習への不使用が明記されており、エンタープライズ契約においてデータ処理の詳細が確認できます。詳しくはOpenAI Enterprise Privacyページをご覧ください。

4. Microsoft Copilotのオプトアウト設定

■ 個人向けCopilot(無料/Copilot Pro)

個人向けMicrosoft Copilot(copilot.microsoft.com)では、Copilot設定画面内の専用トグルでモデル学習への利用を制御できます。

■ Microsoft 365 Copilot(法人向け)

Microsoft 365 Copilot(法人向けプラン)では、顧客データはMicrosoftのAIモデル学習には利用されないことが明記されています。法人契約では、組織のデータ保護とコンプライアンス要件が厳格に守られる設計になっています。

5. Google Geminiのオプトアウト設定(Gemini Apps Activity)

■ 設定手順(個人向けGemini)

Google Gemini(gemini.google.com)では、「Gemini Apps Activity」という設定で、会話データの保存と学習利用を制御できます。デフォルトでは18ヶ月間保持され、その後自動削除されます(3ヶ月または36ヶ月への変更も可能)。

■ Google Workspace Gemini(法人向け)

Google Workspace with Gemini(法人向けプラン、2024年10月以降Gemini appがcore serviceとして提供)では、顧客データはGoogleのAIモデル学習に利用されないことが契約上保証されています。Google Workspaceの利用規約では、組織データの保護と学習利用の禁止が明記されています。詳しくはGoogle Workspace with Gemini FAQ(公式)で確認できます。

6. 既に入力した機密情報を削除する方法

■ ChatGPT(OpenAI)への削除申請

もし既にChatGPTに個人情報や機密情報を入力してしまった場合、OpenAIの「プライバシーポータル」から個人データ削除申請を行うことができます。

■ Microsoft Copilot / Google Geminiでの削除

Microsoft Copilotの場合は、Copilot設定画面から会話履歴を削除できます。また、Microsoftアカウントのプライバシー設定から「アクティビティ履歴」を削除することも可能です。

Google Geminiの場合は、myactivity.google.comから「Gemini Apps Activity」を削除してください。

7. 今後の安全な使い方チェックリスト

AIサービスを安心して使い続けるために、以下のチェックリストを活用しましょう。

8. よくある誤解と正しい理解

■ 誤解❌:「無料版は必ず学習されるから使わない方がいい」

正しい理解✅: 無料版でもオプトアウト設定(Data Controls、Gemini Apps Activityなど)をオフにすれば、学習利用を防止できます。設定を確認せずに避けるのではなく、正しく設定して安全に使うことが大切です。

■ 誤解❌:「有料版にすれば完全に安全」

正しい理解✅: 有料版(ChatGPT Plus、Copilot Proなど)でも、個人向けプランの場合は設定次第で学習に利用される可能性があります。法人向けプラン(ChatGPT Team/Enterprise、Microsoft 365 Copilot、Google Workspace Gemini)を契約すれば、顧客データは学習に利用されないことが保証されます。

■ 誤解❌:「オプトアウトしても過去の入力データは消えない」

正しい理解✅: オプトアウト設定は今後の入力データに適用されます。既に入力したデータについては、会話履歴の削除やOpenAIプライバシーポータルからの削除申請を行うことで対応できます。

9. 法人向け:AI利用ポリシーの策定推奨

企業や組織でAIサービスを利用する場合、AI利用ポリシーを策定し、従業員全員に周知することが重要です。

もし社内でのポリシー策定やセキュリティ研修にお困りの場合は、専門家によるサポートをご検討ください。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. オプトアウト設定をしても、AIの回答精度は落ちませんか？

A1. オプトアウト設定はあなた自身の入力データを学習に使わないだけで、他のユーザーが提供したデータや公開データで学習されたモデルは引き続き利用できます。回答精度への影響はほとんどありません。

Q2. 家族で同じMicrosoftアカウント/Googleアカウントを使っている場合、設定はどうすればいいですか？

A2. アカウントごとに設定が必要です。家族それぞれが自分のアカウントでオプトアウト設定を確認・変更してください。特にお子さんやシニアの方には、設定方法を一緒に確認してあげると安心です。

Q3. オプトアウト設定をしても、企業側は会話内容を見ることができますか？

A3. OpenAI、Microsoft、Googleいずれも、不正利用の検知やサポート対応のために、会話ログを確認する権限を持つ場合があります。オプトアウトは「学習に使わない」設定であり、「誰も見ない」という意味ではありません。機密性の高い情報は入力しないことが基本です。

Q4. 法人向けプランに切り替えると、過去の個人プランでの入力データはどうなりますか？

A4. 過去の個人プランでの入力データは、プラン変更後も自動的には削除されません。必要に応じて、会話履歴の手動削除やOpenAIプライバシーポータルからの削除申請を行ってください。

Q5. Google Geminiで「Gemini Apps Activity」が見つかりません。

A5. Googleは設定画面を定期的に更新するため、「ウェブとアプリのアクティビティ」または「その他のGoogleアクティビティ」内に統合されている場合があります。myactivity.google.com で全アクティビティを確認し、Gemini関連の項目を探してください。